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手作業で行っていたFAX送付をシステム化し
業務時間を97%削減した事例

課題と背景

  • 基幹システムからFAX送信できず、印刷して複合機からFAX送付する必要があった。
  • 宛先ごとに送付内容が異なるので、一斉送信サービスを利用できなかった。
  • 毎月の送付先が数百件になり、手作業での対応に限界を感じた。

書面をFAXで送付する業務が増加

FAX一斉送信に関するシステム化、業務改善の事例をご紹介します。

本件のクライアントは病院や介護施設を対象にサービス提供されている企業さまでした。毎月の請求にあたって利用明細と請求書の送付が必要であり、この送信にFAXを使われていたのですが、取引先が増えれば当然作業も増えていきます。弊社にご相談いただいたのは営業事務が「手間が大変」と感じられ「なんとか自動化できないか」と考えられていたタイミングでした。

今もFAXが求められるのは、どんな業界か

「いまどき、なぜEメールにしないの?」と思われるかもしれません。しかしそれは日々パソコンに向かっているデスクワーカーの思考。医療の現場・介護の現場で忙しく働いている方には、パソコンに向かっている時間はほとんどありません。大部分の時間は立って、動いています。だからこそ「気がついたら紙で出力されている」「手に取れば内容が読める」「必要な人のデスクに置けば伝達は終わり」というFAXの仕組みが便利なのですね。医療以外にも店舗、建設・施工、不動産などの現場では今もFAXが多用されています。デスクに座っていては進まない仕事の現場では、今もローテクなFAXが「効率的」だったりするのです。

基幹システムにFAX送信機能がない?

利用明細と請求書をつくる業務支援システムが導入されていたのですが、その基幹システムには「FAX送信機能」がついていませんでした。実際、昨今のクラウドサービスでFAX送信機能を備えているものは稀です。クラウドで業務を処理しようとしているので、今更アナログな仕組みを実装しておくという発想にはならないのですね。仕方がないので書面をPDFで出力し、これを複合機で印刷。1件ずつFAXを送るという業務を行って対応されていました。

現在(および将来)のコストを想定する

業務改善に着手するにしても労力や費用がかかりますから、最初に行うべきは見積です。
何を見積もるかといえば「労力」ですから、実際に作業を行っている人が算出しなければいけません。実際にタイマーで測ってみればよいのですが、おすすめしているのは「業務を分解して、それぞれの時間を測る」という方法です。

業務プロセスの分解(例)

  1. 基幹システムから対象顧客のPDFをダウンロードする。
  2. PDFファイルを開いて、印刷を行う。
  3. 複合機の前に移動し、出力が終わるのを待つ。
  4. 出力された書面をセットし、FAX番号を入力して、スタートボタンを押す。
  5. 送信完了を待つ。
  6. デスクに移動する。
  7. 毎月の請求書送付リストに、実施状況を書き込む。
  8. 書面をファイリングする。

このように分解してからそれぞれの時間を想定すると、ボトルネックが見えてくることもあり、それは業務改善ポイントにつながります。時間がかかっている作業については更に分解してみる、という手もよいでしょう(例えば上記で「基幹システムから対象顧客のPDFをダウンロードする」に時間がかかっていたら、基幹システムの操作ステップまで見ていく、ということです)。

労力を試算する

今回のケースでは、1件あたりおよそ5分、ページ数が多い場合には10分程度かかる見込みとなりました。
100件処理する場合で、500〜1000分の計算となります。これだけで1〜2日かかってしまいます。

また、このように試算することで「ボリュームが増えた時」の想定も可能になります。
300件なら3〜6日、500件なら5〜10日が想定されます。1ヶ月の半分もかけてFAXを送っているなんて、さすがに勿体無いですよね。

FAX送信ソリューションの選択肢

これらの課題を把握し、FAX送信に関わる業務を効率化しようと考えたとき、主に3つのソリューションが考えられました。

1. FAX一斉送信サービスを使う

当社クラウドサービス「NetReal+」「NetFax」をはじめとしたFAX送信サービスを利用する方法です。
すぐに実施できるスピード感があり、同じ原稿を複数の宛先に送る場合は特に便利です。

2. 基幹システムにFAX送信機能を追加する

基幹システムにFAX送信機能を追加する方法です。
導入コストはかかりますが、業務フローを整えるという意味では一番望ましい方法です。

3. 独自のシステムをつくる

FAX送信関連の業務に特化したシステムを作る方法です。
基幹システムに手を入れることが難しい場合など、既存の仕組みにインパクトを与えずに実施できます。

それぞれのメリットとデメリットをまとめてみましょう。

メリット 課題・デメリット
FAX一斉送信
サービス利用
  • FAX機がなくても送信できる。
  • 送信に際して紙を無駄にしない。
  • 同じ原稿を複数の宛先に一斉送信できる。
  • 送信完了を待つ必要がない。
  • 手軽にスタートできる。
  • 宛先・頻度・回数が多いと、業務の手間は減らない。
基幹システム
機能追加
  • 業務フローをシンプルにできる。
  • 送信結果を基幹システムに反映できる。
  • 基幹システムへの機能追加作業が必要になる。
  • FAX送信サービスをAPIで提供している事業者との契約が必要になる。
  • 基幹システムに手を入れることのリスクがある。
  • 一定の開発期間とコストが必要になる。
独自システム
開発
  • 業務に合わせたシステムを作るので、使いやすい画面で実現できる。
  • 既存のシステムに影響を与えない。
  • 手作業によるミスを軽減し、手間も減らせる。
  • 開発、保守コストがかかる。
  • 基幹システムからのデータ出力等、業務フローの整備は必要になる。

今回のケースでは「件数が多く、一斉送信サービスでは楽にならない」「基幹システムを触れない」という観点から、「(3)FAX送信用のシステムを作る」という選択になりました。

当社をお選びいただいた理由

いくつかの事業者にお問い合わせ、比較のうえで、当社をお選びいただきました。

お選びいただいた理由は、第一に「FAX送信に関する、柔軟なシステム開発が行えること」。FAX事業者は主に送信サービスをビジネスとされており、望んでシステム開発を請け負うわけではありません。一方、システム開発をビジネスとしている会社に問い合わせても、FAX送信に関するノウハウは不足していたりするものです。FAXとシステム開発、双方に関する知見を持ち合わせていたことで、当社をお選びいただく運びとなりました。

二点目は、「早期に実現できたこと」。実際、開発期間に関しては2ヶ月程度で済み、テスト運用を含めて3ヶ月目には実際のFAX送信を実施していました。これまで自社開発でシステムを作ってきたことにより、スピード感を持った開発をご提案できているかと思います。

三点目は、「コストが妥当だったこと」。他社と比較し、お見積の段階で納得感をお持ちいただいたほか、契約の形についても柔軟な選択肢をご用意しました。本件ではランニングコストを抑えることが期待されていましたので、初期費用の中で開発に対応し、保守費用を最小限とする設計としました。

提供ソリューション

  • 報告書PDFファイルを宛先ごとに分割するプログラムを開発
  • 分割されたPDFと宛先を照合し、送信先の間違いを防止する機能を実装
  • ボタンひとつで全宛先へのFAX送信を自動化

システム設計のポイント

まず、オペレーションの手間が極力小さくなるように業務フローを整理しました。基本的にはファイルのアップロードと、予約確定ボタンだけでFAX一斉送信が完了。独自のシステム開発だから「使いやすさ」の実現にこだわりました。

このようなフローであれば、送信予約の最初のステップは10分程度まで圧縮され、件数によって手間が増えることもありません。

PDFの分割処理は、お客様固有のフォーマットに合わせて開発する必要がありました。送付先のお名前やFAX番号など、重要な情報をPDFからシステムが読み取ることによって、確実な自動処理を実現しています。

分割結果後のシステム画面。誤送信を未然に防ぐためのチェック機能を備え、個々の内容を確認できる仕組みをご用意しました。基本的にはシステムで一括送付する一方、送付できない対象だけを絞り込み、連絡すべき宛先を把握しやすいようになっています。

導入効果

  • FAX送信に関する業務時間が、合計60分程度に圧縮できた。
  • 送信対象300件程の時点で、おおよそ2200分(97%)の時間を削減できた。
  • 送信に関わるエラーを防止でき、今後の取引先増加に耐えうるシステムが用意できた。

アナログな現場にも業務効率化の余地がある

FAX送信などが必要なシーンではIT化・デジタル活用・DXといった業務改善が進みにくいものですが、それだけにポイントが見つかりさえすれば「一気に業務時間を軽減できる」可能性があります。必ずしも「紙をなくすこと=デジタル化」というわけではありません。現場の事情に則してシステム化を行なっていくことがポイントです。

本ソリューションの実現期間とコスト

  • お問い合わせからソリューション実現まで: 6ヶ月
  • システム開発: 3〜4ヶ月
  • 費用: 初期費用 + リリース以降の保守費用(サーバ費用含む) + 毎月の送信実費

業務改善にかかわるソリューション設計・システム開発を得意としています。
システムの実現性および開発期間や費用について、まずはお気軽にご相談ください。

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